睡眠は何時間がベスト?知らなきゃ損する睡眠のギモン10

どんな科学的な治療でもできない脳や臓器のメンテナンスが、睡眠中だけできる。

科学者や医者が何人集まってもできない体内リズムのバランス調節が、眠るだけで整う。

そんな不思議な力をもつ「睡眠」について、わずかながら分かってきたことがあります。

普段もつ睡眠の疑問について、お答えしていきたいと思います。

何時間寝るのがベスト?

日本やアメリカを含め、多くの研究機関が、7時間睡眠が一番死亡率が低い、との報告しています。

日本のJACCが発表した論文によると、1988年から1990年に、40歳から49歳までの被験者、合計104,010人に平均9.9年の追跡調査を行い、7時間睡眠の死亡率が一番低いことを結論付けました。

アメリカでも、およそ220万人に行った追跡調査で、やはり7時間睡眠が一番死亡率が低かったと報告しています。

Francesco P. Cappuccio, et al., Sleep duration and risk of all-cause mortality: A flexible, non-linear, meta-regression of 40 prospective cohort studies, 2010.

しかし、なぜ「寝すぎ」が体に良くないのか、そのメカニズムは解明されていないそうです。

7時間睡眠が一番死亡率が低い!

眠らない女性はどんどん太る?

アメリカで30歳から102歳までの110万人に追跡調査を行ったところ、同様に7時間睡眠の死亡率が一番低い、と分かったのですが、女性のBMI値も7時間睡眠が一番低いことを突き止めました(上図左:女性 上図右:男性)。

興味深いことに、男性のBMI値は基本的に睡眠時間が長いほど低くなる直線型なのに対し、女性は7時間睡眠が一番低くなるU字型です。

女性に対し長時間睡眠がBMI値を上げるのかは不明ですが、短時間睡眠が肥満を引き起こす理由はある程度わかっています。

それは眠らないと食べ過ぎを抑制するホルモン「レプチン」が減り、食欲を増すホルモン「グレリン」が増えるためです。

また、眠らないと「インスリン」が減ることで血糖値が高くなり、糖尿病を招き、交感神経の緊張状態が続くことで高血圧になり、精神が不安定になったり、うつ病、不安障害、アルコール依存、薬物依存の発症率が高くなります。

痩せるし、長生きできるし、ということで女性はなおさら7時間睡眠がベストでしょう。

女性は7時間睡眠が一番痩せれる!

よく寝るだけでバスケットボールが上手くなる?

スタンフォードの男子バスケットボール選手を被験者とした興味深い研究があります。

10人の選手に40日、毎晩10時間ベッドに入ってもらい、それが日中のパフォーマンスとどう関係するのかを調査しました。

具体的には、コート内で何度も折り返しのある80m走のタイムとフリースローの成功率を毎日記録しました。

最初の数日、パフォーマンスはそれほど劇的には変わりませんでした。

学生とはいえ、スタンフォードのバスケットボール選手といえばセミプロレベル。

もともと80mの反復走を16.2秒で走り、フリースローの成功率は10本中8本、3点スローなら15本中10本と言うスバ抜けて高い能力の持ち主ばかりなので、大きな変化は難しいと思われていました

ところが、2週間、3週間、4週間と経過するうちに、80m反復走のタイムは0.7秒縮まり、フリースローは0.9本、3点スローは1.4本も多く入るようになりました。

そして40日に及ぶ実験が終了し、10時間睡眠をやめたところ、選手たちの記録は実験開始前に戻ってしまいました

このことから、たっぷり寝ることで集中力や思考力を高めることが分かります。

ちなみに、上の左図は、上から80m反復走、フリースロー、3点スロー、練習中のやる気、試合中のやる気を普段の睡眠と10時間睡眠で比べています。±の右は誤差を表すので左の数値に注目すると、80m反復走はタイムが縮み、それ以外の数字は上がって成績が上がっていることがわかります。また、右図は80m反復走のタイムの変化を表し、40日かけて徐々にタイムが縮んでいることがわかります。

たっぷり寝ることで集中力や思考力を高める

ランチは「食べても」「抜いても」眠い?

ランチを食べた後って、何だか眠くなりませんか?

食事をとると、「消化のために腸に行く血流が増えて、脳に行く血流が減るから眠くなる」という説をよく聞きますが、どんな状況でも脳血流は第一に確保されるので、ランチ後の眠気と血流は関係ありません

実際スタンフォード大学の研究で、「生物的に、ランチは午後に眠くなる要因ではない」と実験的に示されています。

このランチを食べた後の14時ごろ眠くなる現象を「アフタヌーンディップ」と呼ばれていますが、アフタヌーンディップを改善するにはどうすればいいのでしょうか?

上のグラフは眠たさ(Sleepiness)を表していますが、やはり14時に眠くなることがわかります。

そこで、Baselineである黒棒グラフに対し、3種類の方法で比較を行いました。

Sleep Extenとは、通常より90分起きる時間を遅らせた「朝寝坊法」。

Napとは、14時半から20分昼寝した場合。

Caffeinとは、14時に2杯のコーヒーを飲んだ場合。

その結果、昼寝、カフェイン摂取が16時の眠たさを一番下げましたが、効果は一時的で、全体的に効果が一番高かったのは、朝寝坊法であるSleep Extenでした。

朝寝坊法が効果的であることから、アフタヌーンディップの原因は「睡眠負債」の可能性が指摘されています。

睡眠負債とは、慢性的に寝不足で、それが負債のように重くのしかかっている状態。

朝寝坊法は対処療法でしかなく、根本的な解決には、睡眠負債を解消する睡眠の質の向上しかないのです。

アフタヌーンディップに一番効果があったのは、朝寝坊法

週末の寝だめは効果ある?

「スタンフォード式最高の睡眠」より抜粋

平日は寝る時間ないから、週末に寝だめしてます!っていう人多いかと思います。果たして、週末の寝だめで寝不足は解消できているのでしょうか?

健康な10人を14時間、無理やりベッドに入れた調査 Dement, W.C., Sleep extension: getting as much extra sleep as possible. Clin Sports Med, 2005.があります。実験前の10人の平均睡眠時間は7.5時間。彼らに一日中、好きなだけ寝てもらいました。

1日目はみんな13時間、2日目もみんな13時間近く眠っていましたが、徐々に多く寝ることご無理になり、逆に5時間も6時間もずっとベッドの上で起きているという状態になりました。

結局、3週間後の睡眠時間は平均8.2時間に固定されました。これがこの10人の生理的に必要な睡眠時間だと考えられます。

8.2時間が体にとって理想の睡眠時間だとすれば、平均睡眠時間が7.5時間の彼らは長い間、「毎日40分の睡眠負債」を抱えていたことになります。

それが正常な8.2時間に回復するまでに3週間もかかりました。

つまり、40分の睡眠負債を返すには、毎日14時間ベッドにいるのを3週間続けなければいけないのです。

それだけ「睡眠負債」を返すのは大変なので、平日の睡眠負債を土日にちょっと多く寝るぐらいでは解消されないことが分かると思います。

また、先のバスケットボール選手が3週間後、4週間たってからパフォーマンスが上がったというのは、睡眠負債を返せたことも要因のひとつです。

寝だめでは睡眠不足は解消されない!

「ぐっすり昼寝は」脳に良くない?

昼寝がアフタヌーンディップを和らげるのに一番効果的であることは前述しましたが、どれくらいの長さの昼寝がいいのでしょうか?

2000年に日本の国立精神・神経医療研究センターの朝田隆氏、高橋清久氏らが高齢者337人のアルツハイマー患者とその配偶者260人の「昼ののしゅうかんと認知症発症のリスク」について解析を行いました。

その結果、「30分未満の昼寝」をする人は「昼寝の習慣がない」人に比べて、認知症発症率がなんと約7分の1だったのです。

また、「30分から1時間程度昼寝をする」人も、「昼寝の習慣がない」人に比べて発症率が約半分になりました。

これだけ見ると「昼寝は認知症を遠ざける」といえそうですが、逆に「1時間以上昼寝する」人は「昼寝の習慣がない」人に比べて発症率が2倍も高かったのです。

加えて、東京大学のグループは欧州糖尿病学会で「1日1時間以上の昼寝は糖尿病のリスクを高める」と発表しました。

昼にぐっすり寝てしまうと夜に睡眠圧が上がらなかったり、睡眠惰性による弊害(寝ぼけ)も起こしかねません。

こうした要素を考えると、「仮眠をとるなら20分程度」とするのが良さそうです。

昼寝のしすぎは病気のリスクを高める ⇒ 昼寝は20分程度がベスト

「細切れ睡眠」は有効?

朝晩の電車での細切れ睡眠は、睡眠不足解消に役立つのでしょうか?

結論から言うと、連続して眠った6時間と、細切れで眠ったトータル6時間は質が全く違うので、細切れ睡眠で完全に保管するのは不可能です。

電車内の仮眠はたいていノンレム睡眠であり、睡眠の質に重要なスリープサイクルが細切れでは正しく表れません。

ただ、まったく寝ないよりはマシなので、あくまで補助的な睡眠として用いるのはOKです。

寝ないよりはマシだが、細切れ睡眠は効果が薄い!

ショートスリーパーにはなれる?

ショートスリーパーとして一番有名なのはナポレオンではないでしょうか。ナポレオンは3時間睡眠だったと言われています。

寝る時間が惜しいとき、ショートスリーパーに憧れたりしませんでしたか?

しかし、結論から言うと、ショートスリーパーにはなろうと思ってもなれません。遺伝なのです。

何十年も6時間未満睡眠なのに健康なアメリカ人親子の遺伝子を調べたところ、生体リズムに関係する「時計遺伝子」に変異があることが分かりました。

ショートスリーパーが眠くならない理由は、レム睡眠が圧倒的に少ない代わりに、ノンレム睡眠は同じ時間だけとっています。

つまり、脳が休むべき時間をしっかり確保しているのです。

ショートスリーパーは遺伝!

いびきは「歯並び」を悪くする?

睡眠障害のサインともされる「いびき」ですが、厳密にいうといびきは口呼吸であり、口呼吸は睡眠の質を下げます

哺乳類は本来、鼻呼吸が優位です。1950年代に、成長期のサルの鼻の穴をふさぎ、口呼吸をさせる実験がありました。

するとサルの歯並びは、短期間に一目でわかるほど悪くなりました。ちょうど両八重歯がぐっと前に突き出た状態です。

鼻をふさがれ、過剰に気道を確保しようとしたために、歯並びに変異が起きたと考えられています。

ここから、歯科矯正をする前に「就寝時に呼吸障害がないかを疑う」教訓がアメリカで生まれたほどです。

人間でも口呼吸をしている人のアゴの形やかみ合わせを調べた結果、60%以上は歯並びやかみ合わせに問題あり、25%の人が出っ歯や下アゴの発達不全、10%の人が受け口や上アゴの発達不全がみられた、という調査結果もあります。

それほど鼻呼吸は大切なのです。

「眠っているのに眠気がとれない」という人は、起きているとき「鼻で吸って鼻ではく」腹式呼吸を日中意識することをすすめます。

腹式呼吸が習慣になれば、睡眠中も口呼吸で眠らずにすみ、いびきも解消するでしょう。

日中は腹式呼吸を意識して、鼻呼吸を意識しよう!

「見たい夢」は見られる?

「好きな夢がみられるのか」という調査が行われました。

具体的には、「見たい」と思った夢を事前にあげ、実際にその夢を見た確率を求める、寝ている人の耳に息を吹きかけたり、冷水を顔にたらしたりして「音や温熱、皮膚感覚」の刺激を行い、夢内容が変化するか、もしくは刺激が夢内容に取り込まれないかを調べました。

その結論は…「見たい夢を見るのは不可能」

事前の宣言と夢内容が一致したり、夢が刺激によって変化したりすることは、偶然に起こる以上の頻度で生じることはありませんでした。

残念ながら、「見たい夢」はみれない!









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