コーヒーがこぼれやすいのはなぜ?!コーヒーを科学して導いた意外な解決方法

コーヒーがこぼれる様子

コーヒーを運んでいるうちにコーヒーが波打ってこぼれちゃったっていう経験ありませんか?

でもよくよく考えたら、よくこぼすのはコーヒーだけ…

どうしてコーヒーだけ…? つい淹れすぎちゃうから…? 速く歩きすぎちゃうから…?

実は、コーヒーの淹れすぎなどだけが原因ではなく、コーヒーと人間の歩き方に大きな秘密があったのです!

このことを、研究者が本気で研究し、論文で発表しました。A Study on the Coffee Spilling Phenomena in the Low Impulse Regime

この記事では、論文をわかりやすく解説&こぼしにくくなる解決方法をご紹介したいと思います。

コーヒーの量だけが原因じゃない?

コーヒーカップとワイングラスの振動数の違いによる振動の仕方の違い

まず、コーヒーをコーヒーカップとワイングラスに同量いれて、振る速さを変えるとどうなるのか調べました。

上段(a,b)は2Hz(1秒間に2回振動)、下段(c,d)は4Hz(1秒間に4回振動)で振動させました。

すると、驚くことに、2Hzだとワイングラスの方がコーヒーが激しく揺れるのに、4Hzだとコーヒーカップの方が激しく揺れていることが分かります。

同じ量のコーヒーをいれているのに、カップの形によってコーヒーの揺れ方が変わるのは面白いですね。

このことから、単にコーヒーの量だけがこぼれやすい原因ではないことが分かります。

コーヒーがこぼれるとしたら?

共振するブランコ

「共振」というのを知っていますか?

振動体にその固有振動数と等しい振動を外部から加えたとき、非常に大きい振幅で振動する現象。特に電気的・機械的振動の場合にいい、音の場合は共鳴ということが多い。

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物体には、一度力を加えると振動し続ける振動数があります。

一番物体にとって心地いい揺れ方で、物体によって違うことから、「固有振動数」と呼ばれています。

この固有振動数と外から加える振動数が一致すると、ものすごく大きく揺れる現象が、「共振」です。

例えば、ブランコ。

ブランコが2秒で往復している時、ブランコの固有振動数は0.5Hz(1秒で0.5往復)。

このブランコをより大きく揺らそうと思ったら、押す人がブランコが戻ってきたタイミングで押せばいいですよね。

つまり、押す人の振動数がブランコと同じ0.5Hzであればベスト。

これが、共振です。ブランコを押せば押すほど揺れが大きくなるように、共振が続くと理論上その振幅は無限大に発散するという、恐ろしい現象です。

共振の恐ろしい有名な実例として、タコマ橋の崩落があります。

タコマ橋が崩落している瞬間

タコマ橋はアメリカ合衆国のワシントン州にある、当時世界で3番目の長さを誇っていた巨大なつり橋です。

この丈夫な橋が、開通からわずか4カ月後の1940年11月7日に、風速19m/sの強風によってぐわんぐわん揺れ、ついに崩落してしまったのです。

強度設計上では風速60m/sまで耐えられるはずだったのに、風速19m/sでなぜ崩落してしまったのか

それは、風が吹くことで発生した橋の周りの渦が周期的な力をタコマ橋に与え、それが奇しくもタコマ橋の固有振動数と一致し、共振が発生したためです。

なかなか衝撃的な動画ですので、是非観てみて下さい↓

この共振がコーヒーにも起こると、コーヒーはあっという間にこぼれてしまうというわけです。

その場合、コーヒーの持つ固有振動数と歩くことによってコーヒーに与える振動数が一致すると共振が起こります。

そこで、この研究では、コーヒーの持つ固有振動数と歩行の振動数を測りました。

コーヒーの固有振動数は?

コーヒーの写真

研究者たちは、コーヒーの固有振動数を機械でコーヒーを揺らして求めました。

コーヒーの密度と、表面張力、そして直径82mm、高さ95mmのコーヒーカップを

すると、上のグラフaの水面高さと時間変化に関する結果が出て、それをFFTと言うフーリエ変換を行うと、bの振動数と振幅に関する結果が出ました。

振動数とはコーヒーをどれだけの速さで振るか、振幅とはコーヒーがどれだけパシャパシャするかを表します。

グラフbでは、3.8Hz付近で振幅が最大になっていますよね。

つまり、コーヒーの固有振動数は3.8Hzだと分かったのです。

コーヒーカップを持って歩くときの振動数

図aのようにコーヒーカップを持って、スマホを上に貼りつけて、x,y,z方向それぞれの加速度を計測しました。

ここで、x方向は進行方向に対して横、y方向は進行方向、z方向は上です。

グラフbはそれぞれの方向の加速度の時間変化で、同様にFFTを行うと、グラフcの振動数と振幅に関係が得られました。

この訳の分からないグラフcを読み解きます。

Point!
  • コーヒーの固有振動数は3.8Hz
  • 人間の歩く振動数は2Hz

ここで、頭に入れておきたいのは、上の二点。

コーヒーの固有振動数に加え、人間の歩く振動数(以下、歩行振動数)はおよそ2Hzということです。

この歩行振動数というのは、主に下半身の上下運動から発生します。

コーヒーをこぼさないように、膝を軽く曲げて、そろそろっと運んだ経験はありませんか?

ASIMOがコーヒーを運ぶ様子

ちょうどこんなASIMOのように(伝わってなかたっらすみません…)

逆に言えば、普通に歩けば上下してしまうのです。このことは後ほど。

ということで、グラフcの特徴をまとめるとこのようになります。

      
方向 主要振動数 考察
x方向 1Hz 歩行振動数の半分
y方向 3.5-4Hz コーヒーの固有振動数とほぼ同じ
z方向 1.7Hz 歩行振動数とほぼ同じ

x方向

x方向の振動数と振幅の関係を表すグラフ

まず、x方向について。

グラフcの左のグラフを見ると、明らかに1Hz付近で振幅が大きくなっていますね。

この1Hzという値は歩行振動数2Hzの半分です。

つまり、2歩に1回コーヒーは横に揺れることを意味しています。



y方向

y方向の振動数と振幅の関係を表すグラフ

次にy方向について。

グラフcの中央のグラフを見ると、周期的に主要な振動数が見つかりますね。その中の特に左から2番目の山に注目して下さい。

これは、3.5Hz-4Hzほどの振動数ですね。その値は、コーヒーの固有振動数とほぼ同じであることが分かります。

つまり、y方向の2番目の主要振動数がコーヒーと共振を起こしていたのです!

共振を起こすことで、y方向、つまり進行方向の前後にコーヒーは波打ちます。

それに加えて、x方向、つまり横方向に2歩に1回コーヒーは波打ちます。

このx方向とy方向の効果が混ざることで、コーヒーは回転するように波打つのです!

よくよく思いだしたら、コーヒーを持ちながら歩いていると、コーヒーが回りながらぴちゃぴちゃしていませんか?

z方向

z方向の振動数と振幅の関係を表すグラフ

そして最後にz方向。

グラフcの右のグラフを見ると、1.7Hzで振幅が極大になっていることがわかりますね。

この値は歩行振動数と近いことから、やはり歩くと上下運動していまい、z方向にコーヒーは振動してしまうのですね。

さらに、1.7Hzはおよそコーヒーの振動数3.8Hzの半分であることから、2歩ごとにコーヒーと共振を起こして、y方向の共振を増幅させていることがわかります。

まとめ

以上から、コーヒーがこぼれやすい理由は、一言でいえば共振がおこるためです。

y方向の振動がコーヒーと共振を起こしているのに加え、x方向の振動によって2歩ごとに横に揺れてコーヒーは回りながら波打ち、z方向の振動によって上下に波打って、さらにy方向の共振を増幅させるため


コーヒーがこぼれるのを防ぐ方法

原因がわかったところで、コーヒーがこぼれるのを防ぐ方法はないのでしょうか?

➀後ろ向きに歩く

後ろ向き

なかなか大胆な案ですね!

現実味はなさそうですが、科学的根拠はあります。

後ろ向きでの振動数と振幅の関係

こちらは、後ろ向きでの振動数と振幅の関係です。

先ほどの前向きと比べて、y方向の振幅が大きく変わっていることにお気づきでしょうか。

後ろ向きでは、軒並み振幅が小さくなっていますね。

逆に、x方向に振幅が軒並み大きくなっています。

これは、後ろ向きに歩くのが慣れていないから、進行方向には勢いよく進めなくて、逆に横方向に揺れるように動くようになるため。

言われてみれば、そうですね!

こうすることで、コーヒーの振動数とマッチする振動数がy方向から消えるため、共振が起こらないというしくみ。

でも、後ろ向きに歩くことで、逆に衝突事故が起きて本末転倒なことになるので、実用的ではないでしょう。

②コーヒーカップをたくさんに分ける

コーヒーカップをたくさんに分ける

これもまた突飛な方法。

コーヒーカップを大量に分けることでコーヒーカップの振動特性を変え、共振の振動数からそらす方法。

ここまでして防ぎたくないですよね(笑)

③コーヒーカップの持ち方を変える

コーヒカップの新しい持ち方

ついに来ました、一番まともな方法です。

コーヒーカップの持ち方を柄を持つのではなく、覆いかぶさるようにもつとこぼれにくいのです。

これを、論文では「Claw-hand posture」と呼んでいます。

新しいコーヒーカップの持ち方での振動数と振幅の関係

そして、もうお馴染みの振動数と振幅の関係のグラフ。

ここで注目すべきは、y方向。

一番初めのy方向の結果と比べて、3.5-4Hzの振幅が小さくなっているのがお分かりでしょうか。

つまり、コーヒーの振動数3.8Hzと共振しにくくなったのです。

これは、是非試してみて下さい!

カプチーノはブラックコーヒーよりこぼれにくい?

カプチーノの実験

上図(a)のように、泡を作った場合で実験を行いました。

その結果、上図(b)で示されるように、泡の厚さが厚いほど振幅が小さくなりました。

これは、なんとなくイメージが付きますね。

つまり、泡の多いカプチーノ>カフェラテ>ブラックコーヒーの順にこぼれにくくなります。

最後に

いかがでしょうか。

持ち方を変えるだけでこぼれにくくなるというのは意外ではなかったでしょうか。

今回の実験ではブラックコーヒーを想定していますが、他の飲み物、牛乳や紅茶などでは条件が変わってきます。

具体的には、液体の密度と表面張力が異なるためで、そうすると液体の固有振動数が変わり、共振する振動数が変わってきます。

たまたま、コーヒーの固有振動数と人間の歩き方がマッチしてしまったのですね。

「Clow-hand posture」是非試してみて下さい!









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