『Think right』を読まずして分かる あなたが陥いる11の思考のワナ②

Think right の表紙画像

前編「『Think right』を読まずして分かる あなたが陥いる11の思考のワナ①」では、誰もが陥ってしまう思考のワナを5つ紹介しました。

後編の本記事では、さらに6つの思考のワナを紹介したいと思います。

全部で何個のワナにはまっていたか数えてみて下さいね。

ギャンブラーの錯覚のワナ

ギャンブラーの誤謬のイメージ図

運命をプラスマイナスゼロに調整する力」が存在していると信じることを「ギャンブラーの錯覚のワナ」と呼びます。

1913年の夏、モンテカルロのカジノで信じられないようなことが起きました。

ルーレットテーブル周りに引き寄せられてきた者はみんな、腰を抜かさんばかりに驚きました。

球が「20回連続」で黒のポケットに落ちたのです。

こんな好機を逃すわけにはいかない、と大勢のプレイヤーが赤にかけました。

けれども、次に出たのも「黒」でした。

さらに大勢が押しかけて、チップを赤の上に置きました。

今度こそ色が変わるぞ! けれども、次に出たのも「黒」。 そしてまた「黒」。 その後も「黒」は続きました。

そして27回目、ついに「赤」のポケットに球が落ちました。

この時点までに大半のプレイヤーは大金を失い、破産していました。

さて、この話からわかることは、このギャンブラーたちは一同にギャンブラーの錯覚のワナにかかっていたということです。

ルーレットは「赤と黒」交互に出るものだと信じていたのです。

たしかに、赤のポケットに落ちる確率は1/2、同様に黒のポケットに落ちる確率は1/2であり、20回以上も黒に落ちたら流石に次は赤に落ちると思ってしまうでしょう。

しかし、実際の事象が確率にしたがうのは、試行回数nが無限に近づいた場合の話です。

これを「大数の法則」と呼びますが、試行回数を増やしていくとコインの表と裏の出る回数が同じになっていきます。

しかし、やってみるとわかりますが、初めの数十回程度では表と裏が出る確率は1/2とはまったく異なります。

少数の試行で、その事象がもつ本来の確率が観察されるはずたという誤った思い込みをしては判断を誤るのです。

前編では「平均への回帰のワナ」を紹介しましたが、「ギャンブラーの錯覚のワナ」はそれと矛盾していないのでしょうか?

結論から言うと、矛盾していません。

なぜならば、平均への回帰のワナでは「前後のつながり」がありますが、ギャンブラーの錯覚のワナには「前後のつながり」がないからです。

よくよく考えてみると、コイントスで前に表と裏のどちらが出ようと、次の結果にまったく影響しませんよね(いかさまなしで)。

ですので、試行回数が十分の大きくないときは、何回連続で表が出ようと不思議な話ではないのです。

つまり、目の前で起こっている出来事が、前の出来事の影響を受けているかどうか、前後につながりがあるかないか、冷製の判断する必要があります。

倍々ゲームのワナ

倍々ゲームのワナのイメージ図

私たちは、一定の数量で増加する直線的な関数を直感的に理解していますが、2倍ずつ増えるような指数関数的な増加や、100分率(%)で表された増加に対しては感覚的にわからなくなる、これを「倍々ゲームのワナ」と呼びます。

「厚さ0.1mmの1枚の紙を半分に折る、さらに半分に折る、さらにそれを半分に折る、この半分に折る作業を50回つづけると紙の厚さはどのくらいになりますか?」

50回折った紙の厚さを正確に瞬時に予想できる人はほぼいないでしょう。

極端な話、 0.1mm×50 がパッと出てくるイメージではないでしょうか? 

これは人間が得意な直線的な理解をしてしまっています。

折るごとに前の厚さの2倍になっていくので、最初は大したことないですが、後半はとんでもない厚さの倍になるので、とてつもない厚さになります。

地球と太陽までの距離がおよそ1億5000万kmと言われているので、50回折ると地球と太陽までの距離のおよそ1/3、52回折るとそれを超えてしまいます。

さらに、宇宙の果てまでの距離を138億光年とすると、91回折ると宇宙の果てまで到達してしまいます。

「たった91回紙を折っただけで宇宙の果てまでの厚さ?!」と思ってしまうように、人間がいかに指数関数的な理解が苦手かわかるでしょう。

また、ドラえもんの「バイバイン」を使ってくりまんじゅうが庭を埋め尽くす話も、のび太が倍々ゲームのワナにはまったと言えるでしょう。

こちらの記事でも、『③直線本能 「世界の人口はひたすら増え続ける?」』で人間の直線的な理解を紹介しています。

他にも、人間は100分率(%)で表された増加に対しては感覚的にわからなくなります。

交通事故の件数は、毎年7%増えている」「交通事故の件数は10年ごとに倍になる

インフレ率は5%に達する」「14年後には100円の価値が50円になる

同じ内容を言っていますが、どちらの方がピンときますか?

おそらく、両方とも後者でしょう。

前者は、「たった7%か〜大したことないな」と思ってしまいませんか?

倍々の毎年×2より増加は緩いですが、毎年×1.07されていくので次第に増加幅が大きくなります。

10年で倍になるとすれば恐ろしい話ですね。

上述していますが、やはり人間は、倍や半分といった直線的な理解が得意です。(倍々は二次関数であり曲線ですが、倍や半分は一次関数の直線です)

それはどうしようもないので、騙されないように自分の感覚頼らず、ざっくり計算する術をもつのが賢明です。

つまり、年間1%の増加の場合、2倍になるまでの時間はおよそ70年(倍加時間)に当てはめて計算するのです。

この70という数字は、log 2 / log (1.01) から導かれます。

年間7%の増加なら「70÷7=10」で倍加年数は10年、年間5%の増加なら「70÷5=14」で倍加年数は14年となります。

この計算式をもっておくことで、倍々ゲームのワナから逃れられることができます。

昨今の新型コロナウイルスの感染者数の増加に驚く人が多いですが、感染者1人が未感染者2人に感染させると仮定すれば、感染者数ははねずみ算のように倍々に増えます。

直線的に感染者数が増えると思っていて感染者数の指数関数的な増加に驚いた人は、倍々ゲームのワナにはまっています。

誤った因果関係のワナ

誤った因果関係のワナのイメージ図

原因と結果を勘違いすることを「誤った因果関係のワナ」と呼びます。

この思考のワナは、かなり手強いです。

社員のモチベーションが高いと、企業の利益が大きくなる

長期にわたる入院は患者にとって好ましくない

科学的に実証! XYZシャンプーを毎日使用した女性の髪は丈夫だ

本がたくさんある家庭の子どもは本が少ない家庭の子どもより成績がいい

これらの文章はもっともらしく聞こえて、誤った因果関係のワナにかかっている可能性が高いです。気づけたでしょうか。

会社の業績がいいからこそ、社員のやる気が出来たかもしれません。

すぐに退院できる患者は、長く入院しなければならない患者よりも元気なのであって、長く入院していたから不健康になったのではいでしょう。

もともとコシのある髪の女性がそのシャンプーを使う傾向があっただけの可能性があり、そのシャンプーを使ったから髪が生き生きしてきたとは言い切れません。

一般に、教養のある親はそうでない親よりも、子どもの教育に関心があるというだけのことです。本と成績に関する調査結果が発表されてから、世の親たちは本を買いあさるようになったそうです。

なぜ、「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」と言われているのでしょうか。

この伝説は全世界的に有名なストーリーであり日本にも輸入されたそうですが、一説には「出生率の低下」と「コウノトリの減少」の関係からきているとされています。

1965年から1987年までの人間の出生率とコウノトリの出生数をグラフで表すと、両者の線の動きがピタリと重なったのです。

その傾向から「コウノトリ=赤ちゃん」と言うイメージがついたのです。

しかし、実際にはコウノトリと赤ちゃんに因果関係があるわけではなく偶然の一致です。

このように「原因」と「結果」の矢印の方向があっているか?反対方向になっていないか?、さらにはコウノトリのように関係がそもそもあるのか?見極める必要があります。

条件結合のワナ

条件結合のワナのイメージ図

「矛盾のない」「もっともらしい」話を感覚的に受け止めてしまうことを「条件結合のワナ」と呼びます。

クラウスは35歳。大学で哲学を専攻し、中学校に通っているときから発展途上国の問題に取り組んでいる。大学を卒業すると赤十字社で働き、西アフリカで2年間、それからジュネーブの本部での3年間の勤務を経て主任に昇格した。その後、赤十字を退社し、MBA(経営学修士)コースのプログラムを受講し、「起業家の社会的責任」に関する修士論文を書いた。そしてMBA取得後に再就職した。

さて、次のうち、どちらの可能性が高いでしょうか?

①クラウスは一流銀行で働いている

②クラウスは一流銀行で働き、銀行が運営している発展途上国向けの基金を担当している。

たいていの人は②と答えるでしょうが、残念ながら、答えは①です。

なぜならば、②の場合、クラウスは一流銀行勤務という条件だけでなく、さらに追加の条件も満たさなければいけないからです。

銀行で働いている人の中で、発展途上国向け基金の担当をしている人はほんのわずかしかいません。

そう考えれば、答えが①になる方が②になるよりもはるかに可能性が高いと気付きます。

それでも②の方が可能性が高いと感じてしまうのは「条件結合のワナ」のせいです。

条件が少ない①よりも、②の方にストーリー性を見出してしまい、起こる可能性が高いと感じてしまうのです。

しかし、ストーリーを無くしてこのように質問すればどうでしょう。

クラウスは35歳。どちらの可能性が高いでしょうか?

①クラウスは銀行に勤めている。

②クラウスはフランクフルトの銀行に勤め、彼のオフィスは24階の57号室だ。

これならばワナにかからないでしょう。

フランクフルト空港は閉鎖され、飛行機はキャンセルされた」と「フランクフルト空港は悪天候のために閉鎖され、飛行機はキャンセルされた

どちらが現実となる可能性が高いか? もう引っかかりませんね。

石油の消費量は30%減少する」と「原油価格が劇的に高騰し、石油消費量が30%減少する

これにもあなたはもう引っかからないでしょう。

しかし、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが1982年に開催された国際会議で行った、専門家を対象にした実験では、はっきりと「原油価格が劇的に高騰し、石油消費量が30%減少する」を選択した専門家が多かったそうです。

専門家ですら間違えてしまう「条件結合のワナ」。

カーネマンによると、「考える」という行為には2種類あり、1つは「直感的に無意識のうちに、即座に考える場合」もう1つは「意識しながら合理的に、ゆっくりと論理的に考える場合」です。

「直感的な考え」に飛びついて「意識的な考え」を捨てると、もっともらしい話に惑わされてしまいます。

2種類の思考の違いを意識することが重要となります。

選択のワナ

選択のワナのイメージ図

統計サンプルを選ぶ際に、全体ではなく、偏ったサンプルを選ぶことで間違った見方をしてしまうことを「選択のワナ」と呼びます。

この選択のワナはカラクリに気づくと「なるほど」と理解できますが、ほとんどの人が一度ははまったことのあるワナでしょう。

どうしていつも自分ばかり渋滞にはまるんだよ」「スーパーのレジで自分が並んだレーンだけいつも遅いんだ」こう思った経験のある人は多いはずです。

そう思ってしまう理由は、渋滞のときはゆっくりしか進まず、その分余計に時間が費やされ、逆に車がスムーズに流れているときは渋滞のことなどまったく考えないからです。

しかし、全体を考えてみると、渋滞が起こる確率は常に数十%で推移しているはずで、あなたがいようといまいと渋滞は起こっています。

さらに、全体で考えると渋滞に巻き込まれる確率は数十%なのに、あなたは「渋滞を含めて運転にかかった全時間」を基準にして考えてしまうため、渋滞ばっかり引っかかると思うのです。

つまり、地点Aから地点Bまで車で10分で行けるのに、90分渋滞に巻き込まれたら、渋滞が全体に占める割合は90分/100分と90%になり、「渋滞ばっかだ、ちくしょう」と思うわけです。

このとき、分母が変わったことにお気づきでしょうか。

全体(走行しているすべての車)ではなく、偏ったサンプル(運転席のあなた)を基準に選ぶことで間違った見え方をしてしまったのです。

つまり、「どうして自分だけが」と感じることがあっても、それは自分を基準に見ているからで、全体をから見ればあなたが特別変であるわけではないかもしれないのです。

今度、渋滞ばかり巻き込まれるとグチっている友人がいたら、そっと選択のワナを教えてあげて下さい。

ジョークとして愉快なのは、こちら。

ある会社が「電話をもっている世帯は何%か」の調査を電話でしたら、なんと100%だった!

ゼロリスクのワナ

ゼロリスクのワナのイメージ図

危険のまったくない状態(ゼロリスク)だけしか価値があると思えないことを「ゼロリスクのワナ」と呼びます。

シカゴ大学の2人の研究者が実施した実験では、私たちは有毒化学物質による汚染の危険性が「99%ある場合」と「1%しかない場合」でも、どちらも同じだけの恐怖を感じることが証明されています。

つまり、0%のリスクにしないと価値を感じないのです。

他にも、ロシアンルーレットで6連発のリボルバーのシリンダーの中に、銃弾が5発入っていようと、1発入っていようと、0発にしない限り、死の恐怖を感じますよね。

このような単純化した状況だと、ゼロリスクのみに価値があることは当然ですよね?

しかし、現実世界はもっと複雑で、リスクを0にすることなど不可能なのにも関わらず、ゼロリスクの考えを持ち込んでしまうことが問題となるのです。

「ゼロリスクのワナ」が招く典型的な例は、1958年にアメリカで実施された「食品添加物規制」の大幅改正です。

改正法では、発がん性のある添加物は微量であってもリスクが認められる限り、食品に使用してはならないとされていました。

この徹底された禁止(ゼロリスク)は、当初素晴らしいことのように思われましたが、結果的に、発がん性はないものの、より危険な添加物が使用されるようになってしまったのです。

発がん性のゼロリスクのみを追求したために、本末転倒の結果となったのです。

そもそも、いくらアメリカが実施したような食品添加物を規制する法律をつくったところで、所詮意味はありません。

なぜならば、食物に含まれている目に見えない”禁止された”分子までをも取り除くことなどできないからです。

そのようなことをしようとすれば、農家は半導体製造工場のように、厳密に農産物を生産しなければならず、不純物がまったく含まれていない自然食品の価格は100倍に跳ね上がるでしょう。

他にも、銀行口座にお金を預けても安全とは言い切れませんし、交通事故のリスクを達成するには、制限速度を時速0kmにするしかありません。

私たちは「ゼロリスクに対して抱く幻想」を捨てなければいけません。

貯蓄、健康、結婚生活、友情、敵対関係、祖国、複雑に絡み合うこの世界では、何ひとつとして確実なものは存在しません。

リスクを下げることは重要ですが、リスク0のみに価値を感じることは止めましょう。

これは、新型コロナウイルスが蔓延る現状にまさに当てはまります。

今でこそ「ウィズ コロナ」というワードが浸透してきましたが、はじめの方は「新型コロナウイルスを撲滅させるか、新型コロナウイルスとは共存して経済を回すか」で議論がされていました。

ゼロリスクのワナを鑑みれば、どちらが賢明かわかるでしょう。

世界保健機関WHOも発表していますが、新型コロナウイルスに完全勝利することはほぼ不可能と思っておいた方がいいです。

とっくに昔の感染症のイメージがある、ペストもコレラも黄熱病もHIVも未だ年間数千人〜数百万人の感染者がいます。

人類が唯一勝利した感染症は、天然痘だけです。

こんなコロナ禍だからこそ、ゼロリスクのワナに注意したいですね。

まとめ

『Think right』で紹介された52の思考のワナがどれもどんぴしゃで、がんばってしぼって11個だけ紹介させて頂きました。

さらに知りたいという方は、実際に本を手にとって頂くことを全力でおすすめいたします。

『Think right』『Think Smart』『Think clearly』どれも核心をついている名著ですので、合わせて読まれることをおすすめします。

また、紹介するという形ですが、自分なりの解釈を入れている場合もあることをここに断っておきます。










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